日本の法律はどうやってできるか

留学から日本に戻ってきて強く感じるのは、法律はあっても使えない制度が多いとか、あって当然の法律がないとか、法制度のインフラがとても不十分ということです(具体的な例はまた書きます)。数年前から、司法改革がスタートしましたが(ロースクールや裁判員制度はその成果)、最近の議論は弁護士の人口問題とか、死刑制度の廃止とか、本来の趣旨とは違う方向に動いています。司法改革の本来の趣旨とは、国民の間に「法の支配」をいきわたらせることであったはずです。ならば、一丁目一番地は必要な法制度を整えることでなければならないのではないでしょうか。

ところで、日本の法律はどのようにできるのでしょうか。意外と法学部の学生でも知らない人が多いようです。「国会」で作るんでしょ?というのは中学生の答えで、大学生の答えとしてはいまひとつ。実際には、日本の法律の大部分は官僚が作るんです。

法律のでき方には大きく分けて3つあります。ひとつめは、ボトムアップ式で各省庁からでてくるもの。これは各省庁の施策を実施するために必要な法律案が各省庁の部課長レヴェルからあがってきます。それを高級官僚で調整して、政府の了解をとって、国会に提出します。これらの法律は行政的な必要性から出てきたものが多いといえます。二つ目は、トップダウン式で、政府の大臣が担当官庁に諮問して、審議会などを経て大臣に答申して、それに従って法律案が作られる方法。これらは、そのときの政府の政策が色濃く反映された法律になります。国会で与野党が対立する法律案はこれです。最後は、議員立法で、国会議員が超党派で国会に提案するもの。これは比較的に政治色がうすく、多くは国民の利益のために必要な法律案といえます。

これまで日本の法律は、ひとつめの官僚が作る法律が多かったのです。容易に想像できるように、法律に従って働くべき行政が法律案作成のイニシアチブをとるのですから、自分たちに都合のいい内容になりがちで、国民の利益は無視されがちになります。本来は、ときの政府の政策に左右されない三番目の議員立法がもっと必要なのですが、日本の場合は議員さんがあまりブレイン(知識のサポーター)をもってないので、十分に機能していないのです。議員から提案されても、内容がいまひとつで、なかなか多数の理解を得ることが少ないわけです。この点、アメリカでは国政でも地方議会でも議員がしっかりしたブレインを持っていて、多くのすぐれた議員立法がされています。

これまで議員立法が低調だった原因としては、議員と学者の人的関連が薄いとか、利益誘導型で票につながらない政策は主張しにくいとか、いろいろな理由は考えられますが、その結果が法制度が十分に機能せず国民の利益が十分に保護されていない現状につながっています。現在の日本は官僚主導で作られた法律でがんじがらめで身動きが取れなくなっているといっても過言ではありません。日本でも、国民の利益を第一に考えた法律が、議員立法の動きにより広がってくることが必要だと考えています。

(2010年12月30日 初出)