イギリスのロースクール期末試験で苦労した話

「テスト対策」で私が思い出すのは、なんといっても10年ほど前イギリスのロースクール留学で、卒業論文を書く資格を得るために国際取引法関連科目の筆記試験を受けたときのことです。1週間で全5科目ありました。1科目あたり2-3時間で答案を書く(もちろん英語)のですが、これが相当きつかった。

(以下はただの苦労話ですので、興味ある人だけ読んでください。)

法律の答案を英語で書くのも大変なのですが、当時イギリスではいわゆる「スタディ・ガイド」がほとんどありませんでした(現在はあるかも知れませんが)。科目の要点をまとめてあり、それを覚えて答案に書けばよいという本がなくて、英語にハンディのある留学生は途方に暮れるばかり。また、イギリスのロースクールでは判例の当事者名を記載する必要があります。判例法の国ですから、A対B事件、その内容は・・というのを、1教科あたり100件前後暗記する必要があります(アメリカのロースクールでは超重要な判例以外は当事者名を記載する必要はないのですが・・)。日本人の若い留学生たちはどのように試験対策をしていいのかわからず、テスト対策に戸惑うばかりのようでした。私よりも英語ができる人も多かったのですが、修士号のための卒論を書く資格を得られないまま、ディプロマ(残念賞)のみで課程を終える人もいたようです。

そのとき40才に近かった私はといえば、背水の陣で、分厚い法律の専門書をまとめて自分なりのノートを作ることにしました。要点を自分なりに整理して文章を作り、それを覚えることにしたのです。約1か月間、朝8時から夜の8時まで安アパートに籠って、休みなくノートを作りました。たくさん文章を書いているうちに、下手な英文もそれらしく見えてきました。また、重要判例はカードを作って、テストの前日に暗記しました。これほど勉強したことは先にも後にもないと感じるほどでした。筆記試験にさえ合格すれば、修士論文の作成は時間をかけられますので、むしろ私にとっては容易でした。

最終的に無事にイギリスのロースクールで法学修士号(LL.M.)をとることができたのですが、帰国後もしばらくは悪夢にうなされました。「判例の名前が出てこない!」と真っ白な答案用紙をみつめて冷や汗をかいている場面でうなされて目が覚めるのです。もう二度とあんな経験はしたくない!と思ったものですが、まさか後年アメリカのロースクールに再び留学するとは・・。やはり達成感があったのでしょうね。

現在の日本には、テスト対策として多数の「スタディ・ガイド」が出版されています。司法試験予備校の教材を利用する学生もいるようです。まじめな学生ほど、そのような本を使うかも知れません。たしかに要領よく重要論点をつかむには便利なツールだと思います。しかし、私の経験からすると、論点暗記や論証の暗記に頼ることは避けたほうがいいと思います。何も後に残らないからです。やはり手間がかかっても自分なりの方法を時間をかけて試行錯誤して(普段から講義に出席する必要があります)、ひとつひとつ理解しながら勉強することが最善のテスト対策です。

(2011年1月20日初出)