アメリカの返品制度

日本では、一般に、いったん購入した商品を返品する場合にはそれなりの理由が必要です。商品にキズがあるとか、説明内容と異なっていたとか、正当な理由がなければ、販売店はなかなか返品に応じてくれないと思います。しかし、アメリカでは(少なくても、私の暮らしたことのあるジョージア州、カリフォルニア州、テキサス州では)洋服や日用品などを購入して、それが気に入らなかった場合、販売店は簡単に返品に応じてくれます。極端な話、商品タグとレシートがあれば、いったん使用しても返品OKだそうです。そのため、アメリカ人の若者の中には、ドレスを購入して、商品タグを付けたままでパーティに出かけ、終わったら販売店に返品するというツワモノも存在するようです。

私はずいぶん前からこの商慣習が不思議だったのですが、最近、妻と話していて納得できました。日本だと返品が難しいので購入するときに慎重になるが、アメリカだと簡単に返品できるので、「とりあえず買っておこう」という心理が働くのだそうです。確かに彼女は購入したはずの洋服やカバンをよく返品していました。

なるほど、一定の返品があっても、それを上回る販売があればいいわけで、消費者としては容易な返品システムがあるために財布の紐が緩みやすい、というわけです。ケチケチせずに返品に応じれば、かえって儲かるという発想はなかなか日本人には浮かびませんでした。考えてみれば、株式の自由譲渡制度があるから大規模な資金調達が可能になるのと同じ理屈で、合理的な仕組みです。

気に入らなければいつでも返品できるという安心感があれば、買い物も楽しくなるはずで、全米でディカウントセールが始まるブラック・フライデーに多くの外国人がわざわざ航空機代を払ってまでアメリカに買い物にやってくるのも納得できます。

ワインは、さすがに一口飲んで返品というのは無理でしょうが・・・。