映画「チェンジリング」2008年アメリカ

1920年代、アメリカで実際に起きた児童大量殺人事件を素材にして、被害者の家族の視点から描いたドラマです。タイトルのチェンジリングとは、「取り替え子」といった意味のようです。シングルマザーの行方不明になった子供が半年後に発見されたのですが、それはまったく別の子供だったというところからストーリーは始まります。自分の子供ではないと母親は訴えますが、メンツを重んじる警察には相手にされず、育児放棄を疑われたり、ついには精神病として収容施設送りにされてしまいます。

電話交換手として働くシングルマザーを演じているのは、アンジェリーナ・ジョリーなのですが、最初は彼女であると気がつきませんでした。役作りのためにかなり痩せていて、ツゥームレーダーなどで有名になったグラマラスな女性のイメージはまったくありませんでした。ただ、赤いルージュをひいた魅惑的な唇が強く印象に残りました。

アメリカ警察の腐敗、精神病棟での虐待、猟奇的殺人など、個々のテーマはややありがちなのですが、くリント・イーストウッド監督はそれらをうまくミックスさせて、長時間ですが見るものが退屈しない作品になっています。

とくに関心をひかれたのは、児童を殺害した犯人が絞首刑にされるシーンです。被害者の家族らが見守る中での絞首刑のシーンをかなりリアルに描いています。日本でも最近、処刑場が公開されましたが、実際の絞首刑が行われると、まさにこの映画が描いたような場面になるのでしょう。それをみて、死刑についてどう感じるかだと思います。私自身は、被害者家族の目前で行われる処刑には意味があると感じました。刑場を公開した死刑反対者の法務大臣の意図には反するかもしれませんが、一定の関係者に対しては絞首刑を公開することも考慮されていいと思います。

それはともかく、最後まで希望を捨てずに矛盾した権力と戦い続ける母親を演じたアンジェリーナー・ジョリーはすばらしく、この作品によりアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたのも納得できました。