鳥取県はわい温泉
3年生のゼミ旅行として行くことになり、9月中旬、西宮北口から貸し切りバスで鳥取県はわい温泉に向け出発した。当日はあいにくの曇り空で、夕方からは雨が予想されている。天候の不安をよそに、参加学生たちは眠そうな目をこすりながらも、後部にテーブルがついたサルーン・カーが珍しかったのだろうか、次第にはしゃぎはじめた。途中道の駅で昼食をとり、午後1時過ぎには宿泊宿の「千年亭」に到着した。
鳥取県羽合(はわい)温泉は、羽合とハワイを掛け合わせたトリンドル玲奈さんのソフトバンクのCMで全国的に有名になった温泉地である。しかし、私たちが訪れたこの日、温泉街の中はあまり人の姿も少なく閑散としていた。目前の東郷池は海のように広く、水面は適度に濁っていて豊富な魚がいそうである。シジミ漁をする小舟も数艘浮かんでいて風情を感じさせる。
温泉の由来がすこし面白い。
慶応2年、幸助というこの地の漁師が東郷池で網打ちをしていたところ、湖中から湯が湧き出る場所をみつけた。幸助はこの湯の利用方法をいろいろ考えた結果、湯のわく周囲に松杭を打ち込み、テント舟2隻を並べて屋台を作り、竹筒で湯を舟に汲み上げ、これを浴槽として温泉風呂を作り「幸助湯」と名付けた。簡単ないっぱい呑み屋も開いた。この幸助湯は陸地からかなり離れていたが、漁師の多かった当地では毎日小舟で通って利用したという。幸助湯は繁盛したが、いつしかなくなり、現在の温泉地は湖中の湯元から温泉組合が各旅館に湯を分けているのだという。
漁師の奇抜なアイデアで始まった湖中温泉が、それから150年を経た現在でも有名な温泉地として残っていることに改めて感心する。
ゼミ旅行自体は学生用の合宿パックだったので、豪華な懐石料理などはつかず旅館側の対応も比較的あっさりしている。しかし、学生たちはバーベキューや花火などをして十分楽しめたようだし、館内にある温泉は東郷池を望む露天風呂など贅沢なもので温泉好きの私としても満足できる旅であった。
(2015年9月18日作成)