市場のチカラ

先日、上海に仕事で行ったとき、日本で数年間留学していた中国の方に通訳をお願いした。
車で移動しているとき、街を歩く着飾った中国の人々を眺めながら、その方がポツリとつぶやいた言葉が私の印象に残っている。

「この10年間で中国人の暮らしは本当に変わりました。みんな豊かになって・・。こんな冨がいままで、どこにあったのだろう。」

私は10年以上前に北京を訪れたことがある。そのときはほとんどの人が人民服を着ていた。経済活動は低調で、レストランに入っても、店員は「没有(ありません)」の連発で、こちらから店にあるものを聞いて注文するという有様であった。それが、現在では、多くの商品があふれているし、接客やサービスも、外国人旅行者が経験する範囲では、十分なレヴェルに達しているといえる。

同じ国なのにこの差は何であろうか。やはり、小平の進めた経済開放政策、市場原理の導入によるところが大きかったのではないかと考える。市場は、人々の欲望を刺激し、やる気や工夫を引き出す力をもっている。がんばれば、誰でもお金が手に入る。お金があれば、とりあえず幸せな生活ができる。現在、我々が見ている中国の人々の冨は、彼ら自身の中から出てきたものである。彼ら自身が、汗を流し、知恵を使って稼いだ結果、手に入れたものである。

市場のチカラは、人々のやる気を引き出し、国民経済を豊かにする。

しかし、中国の市場は、あくまで国家の管理下にある、いまだ独り立ちはしていない市場である。いつか、管理がうまくいかなくなって市場が崩壊する、あるいは、自立して強くなった市場と管理する国家とが対立するときがくるかもしれない。隣国である日本としても、中国市場を見守っていく必要があろう。

(2010年2月23日作成)

旅行

Posted by Michi