もっと外資の導入を

学生さんの就職先が「外資系企業」だと聞くことも最近は珍しくなくなりましたが、それでも日本の外資導入は諸外国に比較すると著しく少ないのです。日本のGDPに対する外資比率はわずか3%あまり。世界平均は25%です。(ここで「外資」とは日本での株式取得や法人設立など海外からの直接投資を指します。)

日本への外資導入を妨げている原因は、法人税率、労働コスト、法律制度など種々のものがあげられますが、根本的的なところでは、規制緩和政策の時代を経た現在に至っても、日本国民には「そもそも本当に外資導入が必要なのか」という感覚があり、市場開放に対して消極的になっているように思います。

日本では「競争」というと、過当競争や足の引っ張り合いといった悪いイメージで語られがちですが、それは「同質間競争」に慣れきってているからです。同じ文化・同じ行動原理の者同士で競争すれば、つぶしあいになるのは道理です。熾烈な競争に嫌気がさせば、こんどは仲間を作って談合に至る場合もあります。同質間競争の中でいかにイノベーションを実現していくのかは経営学では重要テーマのようです。

外資は、当然ながら異質な企業文化と行動原理をもっており、つぶしあいや談合の危険は(ゼロとはいいませんが)比較的少なく、むしろ外資との「異質間競争」を通じて日本企業のもつ潜在能力が引き出される可能性のほうが高いといえます。

たとえば、ネットを検索したらこんな具体事例を見つけました。

精密金型と特殊プレス加工製品を製造するA社(広島県、従業員40人)は、地元の自動車メーカーを主な納入先としてきた。しかし、この自動車メーカーに対して徐々に外資企業が出資比率を高め、経営の主導権を握るようになった。下請け企業に対しても、「環境配慮、省エネ、コストダウン」を中心とした要求を強く出すようになった。A社はそれを企業変革のチャンスとしてとらえ研究開発を進めた結果、他社にはない独自の技術とノウハウを蓄積し、革新的な製造販売を行うことが出来るようになった。今後は海外との技術交流や現地生産、また新規分野である建設資材分野への進出等、大きな発展の可能性をもっている。

これは取引先企業に外資が進出したため下請け企業が刺激を受けて経営が効率化した事例です。もちろん、うまくいく例ばかりとは限りません(対応できず切られた下請企業からすればまったく違った評価になるでしょう)。しかし、状況変化を嘆くだけで終わらず、ピンチをチャンスととらえて企業努力をした結果、独創的なイノベーションが生まれるケースは少なくないものと思います。

若い学生さん達はもちろんのこと、日本国民はまだまだ潜在能力をもっているはずです。彼らが、知らず知らずのうちに閉鎖的な意識を植え付けられ、チャレンジ精神を失わされているとしたら、それこそが真の問題ではないでしょうか。

(2010年8月12日初出)