ハーンドルフ

先日、休みをとって、ハーンドルフ(Harndorf)の村を訪れました。アデレード市内からは路線バス(864F)に乗り、50分ほど山間部に向かって行った場所にあります。ハーンドルフはポーランド(当時はプロセイン領)から宗教的迫害を逃れ移住してきたルター派の人々によって、1838年に創設されたオーストラリア最古のドイツ人村です。1kmほどの通りにお洒落なショップやレストランが建ち並び、ドイツ風の風景を楽しむことができるので、オーストラリア人にも人気の観光地です。近くには著名なワインの製造地バロッサ・ヴァレーもあり、一日で両方を巡るツアーもあるそうです。

ハーンドルフという名前は、南オーストラリア州に多くの移民を乗せてやってきたハーン船長にちなんだもので、ドルフは村をさすことから、ドイツ語で「ハーンの村」という意味だそうです。アデレードに到着したとき、ハーン船長は先住民アボリジニと交渉し、187名のドイツ移民のためにこの土地を提供してもらうことに成功しました。ルター派の移民達は、この地に St Michael’s Church を建設して暮らし始めました。当時、南オーストラリアにやってきた移民の多数派であるイギリス人は港の近くにアデレードの街を作ったことから、ドイツ移民の人々は山間部のこの場所に閉鎖的なコミュニティを作り、水不足に苦しみつつも、農耕を続けながら静かに暮らしてきたようです。しかし平穏なときばかりではなく、第一次世界大戦中にはドイツが敵国となったために、オーストラリア政府はハーンドルフという名を改称する法律を作り、1917年以降は「アンブレサイド(Ambleside)」と呼ばれていたといいます。公園には古い大砲が残されており、村を危機から守らざるを得ない時期があったことが窺えます。ハーンドルフの名称に戻ることができたのは、1935年のことでした。

訪れた場所の歴史を知ることは、観光の楽しみを何倍にも増やします。真冬にもかかわらず暖かい日差しに恵まれたその日、ロックダウンに疲れた妻と私は久しぶりの小旅行に大喜びで、ドイツ風ホテルでビールとソーセージの贅沢な昼食をとったり、お土産物屋をのぞいたり、ベンチで一緒にコーヒーを飲んだりして、幸せな一日を過ごしたのでした。

ハーンドルフの雑貨屋